西表島の自然と文化を次世代へ継承するプロジェクト「Us 4 IRIOMOTE」

<知ろう・守ろう・話そう・残そう>。

まず、知ってほしいことのひとつ。それは、プラスチックゴミの問題。世界中で海洋ゴミが問題となっていますが、西表島も例外ではありません。

ゴミは海岸だけでなくマングローブ林の中にも流れ着いています。エコツアーに詳しく、20年以上に渡りビーチクリーン活動を行なっている「西表島バナナハウス」のガイドである森本孝房さんはこう語ります。

「潮の満ち引きで林に入ってしまうわけですけど、処分が大変なんですよね。まだ海岸だったら拾いやすいです。でも、林の奥に入ってしまったゴミを拾い集めて集積所に運ぶのは本当に大変。しかも、それにはお金がかかるわけです」

回収したゴミは産業廃棄物となるので、専門業者にお金を払って処理を委託しなければいけません。加えて、ゴミ処理場のある石垣島まで運搬する必要もあります。

「Us 4 IRIOMOTE」のパートナーである「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡春美さんはこんなことも教えてくれました。

「西表島が運搬費などの費用を負担して、トン袋(ゴミを運ぶための丈夫な袋)を送っています。1袋のゴミを処分するのにかかるお金は8000円くらいです」

同団体によると、トン袋100袋分のゴミを処理するのに約136万円もかかるそうです。

「政府の補助金もあるんですけどね。それでも負担は大きいです」と徳岡さんは続けます。

「島に流れ着いているゴミの多くは中国と台湾からです。こう言ってしまうと攻撃的になる人もいるのですが、日本だって同じことをしています。日本製のペットボトルなどがハワイで見つかっているんです」

大切なのは誰かに責任を押し付けるのではなく、自分たちの行動を考え直すことなのかもしれません。

イリオモテヤマネコとヒルギ染め
西表島の暮らしを守り、継承する

「Us 4 IRIOMOTE」は、生態系や伝統を守る活動も行っています。

その対象となっているのが西表島の固有種であるイリオモテヤマネコです。環境省は絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)にランク付けし、絶滅危惧種に指定しています。

「Us 4 IRIOMOTE」のパートナー団体である「やまねこパトロール」の髙山雄介さんが、現状を語ってくれました。

「いろんな情報がありますが、イリオモテヤマネコは100頭くらい生息していると言われています。これは種の存続がギリギリのラインで、非常に危ない状況です」

近年、イリオモテヤマネコが自動車にはねられてしまう事故が増えています。2018年は過去最悪の9件となっています。

「まず、自動車のスピードの出しすぎが問題です。また、イリオモテヤマネコは自動車にはねられたヘビをエサにするために道路に出てきてしまうんですね。僕たちはパトロールをして、スピードを測定しながら注意喚起をすると同時に、道端ではねられた小動物の死骸の撤去も行なっています」

注意喚起には、地元の小学生が作った看板も。地域ぐるみでの活動です。

イリオモテヤマネコだけでなく、西表島に代々伝わる「ヒルギ染め」も守り、継承すべき対象です。

「西表島ではヤエヤマヒルギを使うのが伝統で、これはずっと昔から受け継がれています。自然と寄り添って生きてきたんですね。色の出方は、太陽の光によって変わってきます。つまり、西表島以外では同じ色は出せないんですよ」

こう語るのは西表島で「紅露工房」を営む石垣昭子さん。その染物は、ニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)でのイベントで展示されたこともあるとか。

世界に誇れる文化が西表島にある――国内でもそれを知る人は少ないはずです。

「泥染めは泥につけて、色を変えるんだよ。これを何回も何回も繰り返す。そんで、海につけるんだ」

「紅露工房」の石垣金星さんはそう教えてくれました。イリオモテヤマネコをはじめとする希少な動植物だけでなく、この島で脈々と受け継がれる伝統的な文化もまた守るべきものなのです。

みんなで課題を話し、
みんなで自然を残す

「Us 4 IRIOMOTE」が軸とする4つのキーワードの残りは<話そう・残そう>。これまでに紹介してきた西表島の課題について話し合い、世界に誇れる自然を未来に残すのがひとつの目標です。

「西表島バナナハウス」の森本さんと「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡さんが、こうした話をする上で大切なことを言っていました。

「西表島が世界遺産になるのはいいんですよ。でも、その前にやらなければいけないことがあるんです」(森本さん)

「問題はたくさんあります。でも、正しい方法で解決しなければ意味はありません」(徳岡さん)

「Us 4 IRIOMOTE」は、一人ひとりにできることを考えてもらい、自発的に行動をしてもらうためのプロジェクト。そのために、課題を知ることから始めるべきなのかもしれません。

KEENがリードするプロジェクト

「Us 4 IRIOMOTE」はアウトドア・フットウェアブランド「KEEN(キーン)」が発足メンバーとなって牽引しているプロジェクトです。

2019年4月12日より販売されている「UNEEK EVO(ユニーク エヴォ)」のデザインモチーフはイリオモテヤマネコ。その売り上げの10%は「Us 4 IRIOMOTE」の活動に活用されます。

最後に「KEEN」がどういった経緯でプロジェクトを発足することになったのか?どんな思いを込めているのか?ということを紹介します。

キーン・ジャパン合同会社のジェネラルマネージャーである竹田尚志さんにお話を伺いました。

もしも西表島に行くなら
相当な覚悟を持ってほしい

──率直にお聞きしますが、何が西表島に必要だとお考えですか?

 

もっとも改善が必要なのは、我々......私も東京に住んでいますけど、西表島に住んでいない人なんですよ。心構えや行動を変えるのが大切ですね。

 

──観光客のあり方が変わるべき、と?

 

そう。環境保護活動というのは、現地で暮らしている人にこんなことをしちゃいけないとか、こうするべきだと言うわけですけど、そうではなくて……。

地元の人たちには彼らの生活があって、今までの500年以上も受け継がれている暮らしがあって、その中で生まれて、守られてきた秩序があります。

そして、今回課題になっているのがオーバーユース。なんで自然が破壊されているのだろう?と考えると、許容範囲を超える多くの人がその場所に行くからなんですよ。

 

──西表島に訪れる観光客の増加が、自然を破壊する一因になっているんですね。

 

だから、すごく極端なことを言うと「行かないで!」なんですよ。もしも行くなら、訪れる地域に関する情報を前もってよく調べ、規則を守ることは大前提で、さらに何か、地域や自然にとって良いことをして帰ってきてほしい。例えば、ボランティア活動をしてみるとか。

 

──なぜKEENはこうしたCSR活動に力を入れているのですか?

 

オレゴン州ポートランドに本社があるKEENは2003年にできたアウトドア・フットウェアブランドです。その次の年に、スマトラ島沖地震が起きているんですね。その光景を見た創業者Rory Fuerstがすごく心を痛めてしまって。当時、マーケティング予算が約1億円くらいあったんですけど、それを全て災害支援活動に使ったんです。

これがブランドとしての社会貢献の始まりで、それからは会社を大きくして儲けるだけでなく、社会に恩返しをするとか環境保護をすることを経営の大きな柱にしています。

 

──その指針があったからこそ、西表島に目をつけることに。

 

2017年に石垣島と西表島に撮影に行く機会がありまして、自然を守っている方とお話をしたんです。ゴミ問題や世界遺産認定による入島者数の激増などの懸念をお聞きしたところ、素直に「ほっといちゃいけないな」と思いました。

そこからリサーチをして、どういうカタチでプロジェクトを立ち上げるのがいいのかを1年半くらいかけて考えて、やっと「Us 4 IRIOMOTE」のスタートポイントに立てました。

 

──「Us 4 IRIOMOTE」では何を伝えたいですか?

 

西表島は多様な動植物が生息し、絶滅危惧種も多く抱える島です。それはとても繊細なバランスの上に成り立っている生態系だということを意味します。地球にとって非常に貴重だということを多くの人に知ってもらいたい。日本人だけではなく、外国の方も同じです。とにかく知ってほしい。

で、頭の片隅に情報があったら、簡単に自然に悪いことをしなくなると思うんです。逆に、何も知識がないから野次馬っぽくイリオモテヤマネコを見たいと考えてしまう。ツアーが、ヤマネコに与えるストレスや人馴れによる交通事故の増加のことを知ったら、見に行こうと思いませんよね。

イリオモテヤマネコはこの島で奇跡的に数万年を生きぬいた。そういう奇跡的な動物がいるんだと心の中で楽しんでいただく。それがベストですね。

西表島について検索をするだけでもいいかもしれません。少しでも興味を持ってほしい。「Us 4 IRIOMOTE」は、そのきっかけになるような活動をしていきます。

「西表島バナナハウス」の森本孝房さん

「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡春美さん

「やまねこパトロール」の髙山雄介さん

「紅露工房」の石垣昭子さん

「紅露工房」の石垣金星さん

Top image: © 2019 TABI LABO
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