23歳、冬。「愛」と「愛情」の正体が知りたくて。 #01

あなたにとって、
「愛」と「愛情」ってなんですか?

28歳の編集者Sさん(独身女性)の場合。

Sさん:愛と愛情の違いはわからないんだよね、わたし。でも、ひとつ言えるのは、愛も愛情も、自分で認識して与えることはできないのかなって。「これが愛だ」「これが愛情だ」って知ってて与えることはできなくて。第三者に言われてはじめて「愛だったんだ」「愛情だったんだ」ってわかるものだと思うんですよね。

ーー与えられる側もそうですよね。

Sさん:そうそう。で、ちょっと、恋愛のはなしじゃなくて申し訳ないんだけど、犬のはなしをするね。すごく大事にしてた犬がいたんだけど、去年末に死んでしまったんです。

ーー何歳だったんですか?

Sさん:もうすぐ16歳ってところで死んじゃった。長生きだったので、後悔はないんだけど。半分家族、半分っていうか家族、友だちみたいな感じで。

12歳のとき、両親が離婚したんですよ。お母さんと弟と3人で暮らすことになったんだけど、わたしはお父さんっ子だったから、それがとても寂しくて。わたしがあまりにも落ち込んでいたから、お父さんの代わりみたいな感じで、犬を飼うことになったんですよ。それで、すごく大事に可愛がってた。

年も年って頃に、病気で歩けなくなったんだけど、外に出て草とかのにおいを嗅ぐのが好きな犬だったので、「散歩は行ってあげたいな」って思ったの。だから、いつも仕事が終わって家に帰ってから、自転車の前かごにクッションを敷いて、そこに犬を入れて、近くの大きい公園まで行って、そこを2周するっていうのが日課になって。

仕事で家に帰るのが夜10時過ぎとかになっても、いつも自転車に乗っけて散歩してた。犬が、キョロキョロしたり、においをクンクン嗅ぎながら前かごに乗ってるのがうれしかった。真冬で寒くても、すごく疲れてても、わたしはそれがうれしかったから、毎日連れて行ってて。

ひとりで会社から自転車で帰ってくる時は、マフラー巻いててもめっちゃ寒いのに、犬と一緒に自転車で散歩してたその瞬間は、風を受けてても全然寒くなかったの。キョロキョロクンクンしてる後頭部が目の前にあることが、ほんとにうれしかった。もうすぐ死んじゃうっていうのはわかってたから、「ずっと覚えてよ」って思いながら散歩してたな。

それで、死んじゃった時に、お母さんに、「自転車に乗せて散歩したことは最後のいい思い出になってて、あの時、マフラー巻かなくてもぜんぜん寒くなかったんだー」ってはなしたら、そこではじめて、お母さんから、「それ多分、あなたの愛だと思うよ」って言われて。

「楽しんでるかな」「楽しんでほしいな」って思いだけで散歩してたから、そう言われて、はじめて「あれは愛だったんだ」って気づいたんだよね。

ーーうんうん。でも、愛も愛情も確信は持てないのかなって思うんです。

Sさん:そうだね。結局、犬がどう思ってたのかもわからないし。

愛って、自分にも欲があって与えてるものだったりしますよね。「笑ってほしい」とか、「草のにおい嗅いでほしい」みたいな。意識してなかったけど、わたしはその欲があったから、散歩に連れて行ってたんだと思う。

32歳の編集者Oさん(既婚男性)の場合。

Oさん:愛と愛情って、ただの言葉の違いだなって思ってて。意味は一緒。ただ、恋愛と愛では意味が違ってくる。

愛って、一方的でポジティブな感情なんじゃないかな。なんでそう思ったかって言うと、恋愛は、一方的じゃなくて、なにか相手にしたら、それがこっちにも戻ってくるっていう期待がある。

彼氏彼女ってのも、密閉された関係のような気がしてる。そこには他の人には言いづらいこととか、隠しごとがあったりするんだけど。愛の方はもっと一方的でポジティブだから、別に見返りも求めてないし、「誰になに言っても恥ずかしくない!」みたいなものなんじゃないかなって思うんですよね。

ーー別に相手に気持ちが届かなくてもいい、ってことですかね。

Oさん:うん。こっちとしてはめちゃくちゃ愛をもってやったことなんだけど、向こうにとってはぜんぜんピンときてなかったってことはすごくありえる。もしかしたら、ふとした瞬間に相手が気づくってこともありえるしね。

ーー与えてる側は、それが愛だってわかってて?

Oさん:だと、思います。たとえば、「この本が好き」「このアーティストが好き」っていう感情も、けっこう一方的な考え方だなと思ってて、これも愛だと思う。

でもそこに、「実際に会いに行って、好きなんですって言った代わりに、好きって言ってもらいたい!」みたいな見返りを求める気持ちが出てきたら、それは愛じゃない。恋愛に近い感情だなっていうふうに思ってる。


Sさんは「愛は気づかないうちに与えてる」、Oさんは「これが愛だと知ってて与えてる」って言っていた。ちょっと、ハテナは増えたけど、確実に前進できてる手応えはあるなあ。

今回協力してくださったお二方、とってもとってもありがとうございました。

 

トゥ ビー コンティニュウド

 

Top Photo by SAI
-->

バンコク(タイ)の無料ガイドブックはこちら

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする